2014年5月25日日曜日

「印傳極楽金魚」⑥希守池實

「ビシャモンというのは、毘沙門天のことなの。」
「おうおう、少しは知識があるようじゃないカイ、キミ。」
「もう、その口調、直りそうにないね。」
「長い間、日本国のいたるところでミッションをパッシブルに遂行してきたから、いたるところの方言がまじってしもうたんやな。なんでんかんでん、こうなってしもうた。許せよ乙女。じゃなかった許せよ青年。しょうもないのー。我慢せい。」
「分かりもうした。あーあ、どうでもいいですよー。」
「わしはな、古来インドの神の子、毘沙門天じゃ、というか毘沙門天じゃったが、わしらの大御神の怒りをくってな。千年以上も前じゃ。それで在野に修業に出されたのじゃ。“人を愛する心を持っていながら、心優しいがうえに現実に迷い、戸惑っている子羊たちを救済してきなさい”とな、そのうち、いつか分からんが大御神に認められたらまた神の子に戻れるんじゃよ。そのときにな頭に冠した天を、天冠というんじゃが、神のこの証の天を取り上げられて、ビシャモンだけの名になったのじゃ。」
「それはソレハ、お気の毒なことで。」
「おぬしも乗ってきたな、やっと話になってきたダラ。」
「どうにでも、せい。じゃなかった、何とでもしてくれ。」
「わしと同じような境遇の神の子があと二人、この敷島の国日本におるのよ。江戸時代に心のよりどころとなった七福神っておったやろうが。そのうちの毘沙門天、大黒天、弁財天の三人がインド伝来の神の子じゃったのよ。印傳とはインドからの神の使者という意味じゃ。日本に支社を作ったのよ。」

「どこまで本当か分からなくなってしまうよ。駄洒落を入れるのは止めてくれないかな。思考がプッツンする。」

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