2014年6月29日日曜日

時代劇映画シノプシス「相良藩の夏」⑩希守池實


⑩同刻頃、矢嶽村のはずれ。
山村の子供たちの朝は大人の誰よりも早い。
夜の明ける前に起きだして、まずやらねばならぬことがあるからだ。
それは、自分たちの仕掛けている罠を見て回る習慣があるのだ。
この季節は川にかせ針やはえ縄(ヒビなどを仕掛けている)を見回る。日が昇る前にワナを全て見て回る必要があった。
(山村の子供たちに限らず、皆様々なワナを仕掛けることによって、魚や鳥や獣の習性を知る。ワナを仕掛けながら山や谷を翔け回って、山で暮らしていく知恵を得ていくのである。)
その朝もいつものように、半弓を肩にして村を抜け出した子供たちは全部で八名であった。
13歳栗太・7歳おせん兄妹、
11歳八郎・6歳平八兄弟、
11歳弓吉・9歳矢吉・4歳弦吉兄弟、
8歳鷹太郎・5歳おせい兄妹、
17歳おさと・8歳丸助姉弟、
栗太が男では最年長であったが、リーダーは八郎であった。
おさとは山奥の村には不自然なほど顔立ちの整った美しい娘盛りだったがその美しさは白痴のそれであった。

⑪半刻ほど経た矢嶽村

七人の若い刺客たちは、手筈通りまず、猿谷口から矢嶽村を襲った。

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